電車の広告で見かけて気になって購入。読みやすくかわいらしい絵柄とは逆に、そのテーマと内容は凄惨で…。年齢性別問わずたくさんの人に読んでほしい!『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』を紹介していこうと思います。

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─
昭和19年、夏。太平洋戦争末期のペリリュー島に漫画家志望の兵士、田丸はいた。そこはサンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われた楽園。そして日米合わせて5万人の兵士が殺し合う狂気の戦場。当時、東洋一と謳われた飛行場奪取を目的に襲い掛かる米軍の精鋭4万。迎え撃つは『徹底持久』を命じられた日本軍守備隊1万。祖国から遠く離れた小さな島で、彼らは何のために戦い、何を思い生きたのか――!?『戦争』の時代に生きた若者の長く忘れ去られた真実の記録!
購入ページへ『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』の舞台

舞台は太平洋戦争中、激戦を繰り広げたパラオ諸島ペリリュー島。
フィリピンを攻略するために侵攻するアメリカ軍と、それを防ごうとする日本軍がこの島で戦います。
アメリカ軍約5万、日本軍約1万。圧倒的な戦力差です。

物語の主人公・田丸(一等兵)
主人公は、軍に入る前から趣味で漫画を描いており、夢は漫画家になること。
なんと戦地に居ながらも、隙を見つけて絵や漫画を書いているほど。
そんな彼は、周りの人やものを観察することが得意です。
どちらかというと非力で頼りない印象の彼ですが、
田丸はその性質を見込まれ、上司からある仕事を任されます。

「功績係」とは、戦場で亡くなった隊員の「最期の雄姿」を遺族に届けるために、「どのようにして亡くなったのか」を記録する仕事をする人のことです。
しかしこの「功績係」は、一言で表せるほど簡単な仕事ではないのです。

ある日、突然のスコールで久々に水浴びを楽しんでいた田丸と小山の二人。
ところが、雨がやんだと思ったら、突然空襲警報が…。
二人は慌てて着替えて防空壕へ向かいますが、その途中、

なんと小山が足を滑らせ、頭を打って死んでしまいます。
しかし遺族に「頭を打って死んだ」などと報告ができますでしょうか…。
そして何より、本人がそれを望むのでしょうか。
様々な事を考えた結果、田丸が綴った小山の最期がこちら…

このように、本人と遺族のための、嘘のストーリーを作るのも功績係の仕事なのです。
想像を絶する…兵士たちの悲惨な最期

いまいち戦場にいるんだという実感がなかった田丸ですが、功績係を務めながら戦場で過ごすうちに、やがて「ここが戦場であること」「自分がいつ死んでもおかしくない事」を実感していきます。

この後も田丸は目を覆いたくなるような経験をすることになるのですが、だんだんと「戦場にいるんだ」という認識をしていく過程が丁寧に描かれており、読み手が物語に入り込みやすいのが魅力です。
『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』の見どころ
この作品はリアルな絵ではないので過激なシーンもマイルドになっているのですが、逆に、そんな絵柄だからこそ狂気と恐ろしさが際立っているようにも思います。
消え入りそうな声で「ママ」と呟く、倒れたアメリカ兵

田丸と同僚はここで初めて敵兵の「心の声」を聴くことになります。
死ぬ間際に母親を想う敵兵を目の当たりにして、自分が戦っているのは人間だということを思い知らされることになります。
恐怖とショックから同じことを何度も話し続ける日本兵

死んでしまった仲間の最期を聞くため、一緒にいた兵士に聞き取り調査を行う田丸。
怪我をしているものの一見元気そうなこの兵士。
ところが、兵士はそのとき「死ぬ一歩手前」だった事から、まともに話せる精神状態ではなかったのでした。
2か月間飲まず食わず…壕に閉じ込められた日本兵が、死の淵で目にしたモノ…
また個人的にゾッとしたのが5巻のとあるシーンです。
ある班が壕に入っているとき、アメリカ兵に入り口をセメントで塞がれ、2か月間壕に閉じ込められてしまいます。
田丸たちは、その日本兵を救出することになるのですが、硬いセメントを堀り進めていき…

生存者がいるかどうかを確認すると、そこには衰弱しきった日本兵が…。
そして救出したうちの一人が、意味深なことをブツブツと呟いていました。

「サル…くいもん…サルの死骸…」
…いったいどういうことなのでしょうか。
そして、この救出者の中には、片倉という人物(兵長)も含まれていたのですが…


彼はどんなときも表情が変わらず、恐いくらいの銃の腕を持つたくましい人です。
そんな彼が、ちょっと前までの彼の人格からは考えられないほど弱り切った姿と口調で、壕で起きていた事を田丸たちに語ります。

そこにあったモノは、サルの死骸ではなく……
いったい壕で何が起きていたのか、どうしてそうなってしまったのか…
その詳細は、ぜひ本編で確かめてみてください。
『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』まとめ
戦争がテーマの作品は、過激な表現が苦手な方にとってはとっつきにくいかもしれませんが、この作品はかわいらしく柔らかいデフォルメタッチな絵柄のおかげで、読みやすい作品だと思います。
私も過激なシーンは割と苦手な人間なのですが、この作品は凄く読みやすくてしっかり物語が頭に入ってきました。
過激なシーンは苦手でリアルに描かれた作品は抵抗が…という方にも、更に子供にもおすすめできる作品です。
戦争について学べる良い作品で、しかも漫画としてとても面白いんです。
ぜひ読んでみてください!

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─
昭和19年、夏。太平洋戦争末期のペリリュー島に漫画家志望の兵士、田丸はいた。そこはサンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われた楽園。そして日米合わせて5万人の兵士が殺し合う狂気の戦場。当時、東洋一と謳われた飛行場奪取を目的に襲い掛かる米軍の精鋭4万。迎え撃つは『徹底持久』を命じられた日本軍守備隊1万。祖国から遠く離れた小さな島で、彼らは何のために戦い、何を思い生きたのか――!?『戦争』の時代に生きた若者の長く忘れ去られた真実の記録!
購入ページへ「ペリリュー ─楽園のゲルニカ─」 ©武田一義/平塚柾緒/白泉社(ヤングアニマル)